文档:野中君发吉卜力新闻/2018年

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 2017年 2018年 2019年
「野中くん発 ジブリだより」2018年1月号
 
 皆様、新年明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。

 今年もスタジオジブリでは会社で作る年賀状の絵を宮崎駿監督が描いていて、例年通り干支の動物(当然今年は犬です)が描いてあります。三鷹の森ジブリ美術館の年賀状もこれまたいつも通り宮崎吾朗監督が描いているのですが、なんだか今年は両者がやや似ていて面白いですね。どちらもそれぞれのホームページに上がっているので、ぜひ見てみて下さい。なお、美術館の方の絵に登場している人物は内容からして新館長の安西香月さんをイメージしているのではないかと私は勝手に想像しているのですが、はたして。

 さて、スタジオでは現在、昨年から引き続き、宮崎駿監督の新作長編「君たちはどう生きるか」を制作中です。タイトルは吉野源三郎著のあの名作からもらって来ていますがあの本は原作ではなく、映画の内容はオリジナルであり、鈴木敏夫プロデューサーの書いた文章から引用すると"冒険活劇ファンタジー"となります。また、もう1本、宮崎吾朗監督の新作長編も並行して制作中で、こちらはCG作品です。映像以外の分野でも継続して色んな事業を行っていますが、愛知県でのジブリパーク(仮称)の事業も今年から具体的に動き出すべく準備中です。

 一方、ジブリ美術館ですが、オリジナル短編アニメーションの新作「毛虫のボロ」が3月21日(水)から遂に上映開始です。短編ではありますが、本作は「風立ちぬ」以来約5年ぶりの宮崎駿監督の新作であり、一昨年秋に放送されたNHKの番組で採り上げられたりしたので、多くの方から期待の声を頂いておりました。3月分チケットは2月10日からの発売ですので、ご覧になりたい方はもう少しだけお待ち下さい。(三鷹の森ジブリ美術館は予約制です)

 最後に展覧会と映画の情報を。現在、大阪市のあべのハルカス美術館では「ジブリの立体建造物展」を、福井市の福井県立美術館では「スタジオジブリ・レイアウト展」をそれぞれ開催中です。また、1月13日(土)より、中国のCGアニメーション映画の大ヒット作「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」(監督:田暁鵬)が公開されますが、日本語吹替制作監修を宮崎吾朗監督が担当しています。いずれもぜひどうぞ。

 というわけで、改めまして、本年もスタジオジブリとジブリ美術館を宜しくお願い申し上げます。
「野中くん発 ジブリだより」2018年2月号
 
 先月もお知らせしたとおり、3月21日(水・祝)から三鷹の森ジブリ美術館では新作オリジナル短編アニメーション「毛虫のボロ」が、映像展示室の土星座で上映開始されます。ご存知の方も多いと思いますが、ジブリ美術館は日時指定の予約制で、毎月10日に翌月分のチケットを一斉に発売しています。ですので「ボロ」上映開始の日から3月末までのチケットは2月10日(土)に発売開始。この文章が載っている『熱風』2月号の配布開始は2月9 日(金)なので、翌10日がまさに3月分のチケット発売日となるわけで、宮崎駿監督の最新作を早く観たいという方は、この日にご留意下さい。なお、通常ですと土星座の上映作品は約1か月毎に替わるのですが、今回は待望の新作なので、8月31日(金)まで「ボロ」は連続して上映予定です。3月のチケットが入手出来なかった方も、3月以降の毎月10日にどうぞご注目を。チケット購入の方法はジブリ美術館のホームページに掲載されています。さらに、「ボロ」については上映より少しだけ早く、3月14日(水)より、館内2Fのギャラリーで同作をテーマにした展示もスタートします。「ボロ」はCGの使い方等でこれまでにない新たな試みをしていますが、その一方、企画自体は20年以上前の「もののけ姫」の頃から存在しており、長編企画が短編に形を変えて今回遂に映像化されました。さらに、発想の元はずっと以前に遡ります。こうした作品の背景を、ギャラリー展示ではうかがい知ることが出来るのではないでしょうか。ところで展示と言えば、昨年5月よりジブリ美術館で開催中の企画展示「食べるを描く。」ですが、こちらも好評につき、通常より約半年間期間を延長して本年11月まで開催予定となっております。こちらもぜひどうぞ。
 
 もう1つ、この号の配布と同時期のトピックをお知らせしますと、文春ジブリ文庫『ジブリの教科書 コクリコ坂から』が2月9日(金)に発売されます。2013年4月に『風の谷のナウシカ』からスタートした文春ジブリ文庫の『ジブリの教科書』シリーズも18冊目。毎回、独自の視点で新たに書かれた評論や、制作当時の貴重なインタビュー、資料の再録などがあって読み応えのある内容となっています。

 最後に展覧会についてですが、福井市の福井県立美術館では「スタジオジブリ・レイアウト展」を3月11日(日)まで開催中です。ぜひどうぞ。
「野中くん発 ジブリだより」2018年3月号
 
 今月号の特集にもあるように、3月21日(水・祝)から、三鷹の森ジブリ美術館ではオリジナル短編アニメーションの新作「毛虫のボロ」の上映が始まります。宮崎駿監督最新作の本作は、2015年6月から準備作業&制作を開始。2016年11月にNHKのドキュメンタリー番組「終わらない人宮﨑駿」で制作過程が採り上げられ、同番組はかなり話題になったので(再放送や長尺版制作、海外放送もされました)、「ボロ」も世間では結構知られていたと思います。海外では長編の新作と誤解されたりもしたようですが、「ボロ」はジブリ美術館の映像展示室・土星座で上映される10作目のオリジナル短編です。いよいよ公開を迎えることとなりましたが、内容については本号の特集をご覧下さい。ともかくユニークな作品であることは間違いないと思います。上映は8月末までを予定しています。ジブリ美術館は日時指定の予約制ですので、詳しくはホームページをご覧下さい。
 
 さて、神戸の竹中大工道具館では現在、「アニメーションにみる日本建築-ジブリの立体建造物展より-」を開催中です。「ジブリの立体建造物展」は各地を巡回し好評裏に終了しましたが、同展から「となりのトトロ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」など、日本建築に関わる部分を選び出し再構成したのが今回の展覧会。背景画や美術ボード、美術設定等の複製画を紹介する他、「トトロ」の草壁家を立体で一部表現し、その設計の源に触れます。開催は5月6日(日)まで。詳しくは同館のホームページをご覧下さい。
 
 最後になりましたが、二木真希子さんの絵本が復刊されます。二木さんはジブリ作品で大きな役割を果たしたアニメーターの一人で、草木や動物、自然と人のふれあいの描写等で、二木さんにしか描けないような素晴らしいシーンをいくつも描いてきましたが、本当に残念なことに2016年5月に病で亡くなりました。二木さんが生前に描いたオリジナル絵本『小さなピスケのはじめての旅』『小さなピスケのはじめての友だち』はずっと絶版でしたが、二木さんを尊敬する人たち、ファンの方たちの働きかけで、このたび復刊ドットコムから復刊が決まったものです。『小さなピスケのはじめての旅』は3月中旬、『小さなピスケのはじめての友だち』は5月中旬の発行予定で、二木さんの生前の希望に沿って、文字遣いやレイアウトを見直し再編集した新装版となります。さらに、幻の3巻目も今夏刊行するべく検討中とのこと。皆様どうか宜しく。
「野中くん発 ジブリだより」2018年4月号
 
 3月21日(水)から、三鷹の森ジブリ美術館のオリジナル短編アニメーション最新作「毛虫のボロ」の公開が、映像展示室・土星座で始まりました。 公開に先立ち、3月14・15日(水・木)の夜、閉館後のジブリ美術館でマスコミ向けの試写会を実施しましたが、宮崎駿監督の久しぶりの新作ということで注目度が高かったせいか、メディアでの採り上げられ方もこれまでの美術館短編より随分目立っていたように思います。話題の1つに、ラストで流れる久石譲さんの音楽を除き、音声をタモリさんが1人で担当していることがあります。セリフはありませんが、独特の発声で効果音とイメージ上の音をすべて表現しており、この映画の特徴の1つとなっています。試写会で発表された宮崎駿監督のコメントを以下、再録します。

 「ごあいさつ
  生まれたばかりのちっぽけな毛虫に世界はどう見えているのでしょう。
  小学生のとき、植物の光合成について教えられて、光合成はどう見えるのかズーッと気になっていました。
  毛虫には空気の粒は見えるのかなぁとか、葉っぱをかじった時はゼリーのような味がするのかなぁとか、
  狩人蜂は今の戦場でとびまわっている無人攻撃機みたいなものかなぁとか...。
  それでこんな映画ができてしまいました。
  さいごまでつきあってくれたスタッフと、ノボロギクを教えてくれた家内と、音をあててくれたタモリさんに感謝します。
  タモリさんなくしては、この映画は完成しませんでした。
  ありがとう
宮崎駿」
   ジブリ美術館のギャラリーでは「ボロ」のイメージ ボード等も展示中。作品世界に入っていくような飾りつけもされていて、楽しめます。ジブリ美術館は予約制。詳しくはホームページをご覧下さい。なお、昨夏以降の選考を経てジブリ美術館に採用が決まった新人10名が、4月2日(月)より研修を開始。その後は各部署に配属されて、実地でさらに学んでいきます。  さて、展示と言えば、各地を巡回し好評の「ジブリの大博覧会」が、兵庫県立美術館で4月7日(土)より開催中です。会期は7月1日(日)まで。こちらもどうぞ宜しく。
「野中くん発 ジブリだより」2018年5月号
 
 4月5日(木)午前1時19分、高畑勲監督が亡くなりました。死因は肺がん。82歳でした。残念でなりません。言うまでもなく、高畑さんはジブリの主要メンバー3人の1人であり、ジブリで5本の長編映画を監督してきましたが、作品制作のみならず、節々でその知性と教養に裏打ちされた助言を頂戴することも多く、ジブリの精神的支柱とも言うべき存在でした。
 
 これまた言うまでもないことですが、高畑さんはジブリが出来るはるか以前からアニメーションの制作に携わってきており、その歴史は60年近くに及びます。高畑さんがいなければ、日本の、いや世界のアニメーションは現在とは大きく異なっていたでしょう。「太陽の王子 ホルスの大冒険」は、真正面から現代的なテーマと心理描写に取り組み、アニメーションで深いドラマ性のある物語を描けることを証明しました。「アルプスの少女ハイジ」では日常の生活をアニメーションで描くことに挑戦し、1年間のシリーズを通して圧倒的な臨場感、存在感のある作品世界を構築してみせました。いずれも前例のない試みであり、その影響は計り知れません。「火垂るの墓」における徹底的なリアリズムの追求もまたしかり。さらに、レイアウトシステムの創出など、制作システムや技術面での創造も革新的でした。訃報が報じられたとき、日本だけでなく、世界中の主要なメディアがその業績を伝える詳しい記事を一斉に載せたのを見て、今さらながら高畑さんの為してきたことのすごさを感じました。
 
 音楽、美術に造詣が深く、趣味の範囲をはるかに超えた知識を持ち、絵画については『一枚の絵から』等、本まで書いてしまうほどでしたが、好きなことはとことん楽しんで追求する〝エピキュリアン〞でもありました。一方、平和と民主主義を大切にし、「九条の会」の活動なども積極的に行っていました。最後の著作『君が戦争を欲しないならば』(岩波ブックレット)は、高畑さんのそうした面が良く分かる本です。
 
 何でもとことん考え抜き、とことん調べる高畑さん。徹底的に論理の人だったけれど、同時にとんでもないエネルギーを持っていた人でもあり、しばしばそのエネルギーには圧倒されました。もっといろんなお話をお聞きしたかった。掛け替えのない人を喪ったという思いが日に日に増しています。
 
 高畑さんとの「お別れの会」が、5月15日(火)、三鷹の森ジブリ美術館で行われます。
「野中くん発 ジブリだより」2018年6月号
 
 5月15日(火)、「高畑勲 お別れの会」が開催されました。場所は三鷹の森ジブリ美術館。中央ホールの真ん中の階段踊り場とその下に、高畑監督の笑顔の写真を草花で囲んで祭壇を設け、会場としました。この日は快晴。約3200人の方にお越しいただき、高畑監督を偲びました。

 会は2部構成で行われました。まず、11時からは関係者による式典。お別れの会委員長の宮崎駿監督が開会にあたり追悼の文章を読み上げ、全員で黙祷の後、4人の方からお別れの言葉を頂戴しました。東映動画の先輩だったアニメーターの大塚康生さん、同期入社で同じくアニメーターの小田部羊一さん、作曲家の久石譲さん、「レッドタートル ある島の物語」監督のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットさん。その後は二階堂和美さんに「かぐや姫の物語」の主題歌「いのちの記憶」をお別れの歌として歌っていただきました。喪主で高畑監督のご長男の高畑耕介さんが親族を代表してご挨拶をされ、最後は鈴木敏夫プロデューサーがご挨拶。献花に移り、宮崎、鈴木、耕介さん、そして奥様の高畑かよ子さんが献花した後、会場内の参列者が順番に献花。さらに、美術館に隣接する広場に設置された別会場のテント内で参列していただいた方々に館内に順次移動していただき、献花は続きます。式典・関係者の献花がすべて終了した後、14時からは一般の方々の献花に。広場内の待合所から館内に移動していただき、順番に祭壇前で献花。17時まで受け付けて、約2000人の方々に高畑監督を偲び、お別れをしていただきました。
 
 会場内には他に、高畑監督の写真を沢山貼り付けたパネルや、ゆかりの品々、著書などの展示や、その生涯を綴った約10分の特別映像の上映もあり、多くの方々が見入っておられました。
 
 沢山の方々にご参列いただきましたこと、改めまして御礼申し上げます。有難うございました。式典でのお別れの言葉、挨拶、歌、いずれも本当に心がこもった胸を打つ内容でした。また、平日にもかかわらず多くのファンの方々にもご参列いただき、高畑さんと、その作品がとても愛されていることを改めて感じました。皆様のおかげで、温かく、優しく、清々しいお別れの会になったと思います。私自身、未だに悲しい気持ちはありますが、1つ区切りがついた気がします。
 
 最後に改めまして、高畑さん、有難うございました。
「野中くん発 ジブリだより」2018年7月号
 
 夏が近づき、今年もジブリ関連の展覧会が各地で開催されますのでまとめてご紹介します。
 
 まず、すでに開催中の展覧会から。宮崎県立美術館では「スタジオジブリ・レイアウト展」を開催中。2008年から10年間に亘り、海外を含む各地を巡回してきたレイアウト展ですが、とうとうこの宮崎が日本では最後の開催となりました。奇しくも宮崎県でのジブリもの展覧会は今回が初。9月17日(月・祝)までですのでこの機会にぜひどうぞ。

「スタジオジブリ 鈴木敏夫 言葉の魔法展」は名古屋の松坂屋美術館で7月16日(月・祝)まで開催中。鈴木敏夫プロデューサーの書や手書きの原稿、企画資料など様々な言葉と膨大な展示品を通して、ジブリ作品誕生の背景を知ることが出来ます。同展はすぐに金沢に移動し、7月27日(金)から8月25日(土)まで、金沢21世紀美術館で開催されます。
 
 浜松市美術館では「近藤喜文展」を開催中。高畑作品、宮崎作品を支えた日本屈指のアニメーターであり、「耳をすませば」を監督した近藤さんが亡くなって今年でちょうど20年。近藤さんの素晴らしい絵の数々を展示するこの展覧会は9月9日(日)までです。
 
 また、「近藤勝也展」が新潟県立万代島美術館では開催されています。抜群の画力でやはりジブリ作品を支えてきた勝也くんは、キャラクターデザインでも大きな働きをしてきました。多数の原画でその絵の魅力を見せる同展は9月24日(月・祝)までの開催です。
 
 そして海の向こうの上海では、中国本土で初のジブリもの展覧会「World of GHIBLI in China」が開催中。場所は上海環球金融中心。高層ビルの上下2つのフロアーを使用して、「ジブリのアートの世界」展を4階で、「天空の城│ジブリの飛行夢想」展を94階でそれぞれ展示。巡回展ではなく、広大な中国のスケールに合わせた新たな内容です。中国に行かれる方はご覧になってみてはいかがでしょう。10月7日(日)まで。
 
 さらに、今後開催されるものとして、広島県立美術館で7月21日(土)から始まる「ジブリの大博覧会」があります。各地で大好評の同展ですが、中国四国地方は初。9月24日(月・祝)までの開催です。
 
 最後になりましたが、書籍『トトロの生まれたところ』(宮崎駿 監修、スタジオジブリ 編、岩波書店刊)が好評で重版が続いています。宮崎朱美さんの草花のイラストが特に魅力的です。こちらもどうぞ宜しく。
「野中くん発 ジブリだより」2018年8月号
 
 この原稿を書いているのは7月中旬ですが、すでに梅雨明けから2週間経過していて、暑い日が毎日続いています。関東地方で6月に梅雨明けしたのは観測史上初とのことですが、まさに異常気象ということだと思います。恐らくはその影響の1つだったのでしょう、7月上旬には豪雨が西日本の広い範囲で発生し、大きな被害がありました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。『熱風』のこの号が出る8月10日頃も、まだまだ暑い盛りではないかと心配ですが、これ以上の水害や酷暑による被害のないことを願っております。
 
 さて、この夏も金曜ロードSHOW!ではスタジオジブリ作品の連続放送が実施されます。題して「3週連続 夏はジブリ」。まず、8月10日(金)には「ハウルの動く城」。翌週の8月17日(金)には「となりのトトロ」。そして 8月24日(金)は「猫の恩返し」が放送されます。どうかご覧下さい。また、今回も、データ放送やSNS等でのデジタル展開が予定されていますので併せてお楽しみ下さい。
 
 この夏はジブリ関連の本がいくつか発売されましたのでここで改めてご紹介します。まず、スタジオジブリ出版部編集のいしいひさいちさんの『ののちゃん全集』11巻が7月27日に発売されました。朝日新聞朝刊連載4コマ漫画の単行本ですが、11巻は2016年、2017年の掲載分をすべて収録。巻末にはののちゃんの幼稚園時代を描いた描き下ろし漫画「ののちん」も入っています。昨年連載7000回を達成したこの漫画、変わらぬ面白さで本当にすごいことです。今回は同時期に『ののちゃんセレクション ポチ!』も発売されました。また、文春ジブリ文庫では『ジブリの教科書19 かぐや姫の物語』が8月3日に発売。「ナウシカ」から始まった『ジブリの教科書』シリーズもこれがひとまず最終巻、全20巻の完結となります。そして鈴木敏夫プロデューサーの『禅とジブリ』が淡交社から7月5日に出ています。雑誌『なごみ』に連載された3人の禅僧との対談をまとめた本ですが、発売即、重版がかかっており、「禅」と「ジブリ」の組み合わせが皆さんの興味を引きつけているのかも。
 
 最後になりましたが、先月もお伝えしたように現在、各地でジブリの展覧会が開催中です。上海で開催中の「World of GHIBLI in China」を含めると6つ。機会がありましたらこちらもどうかご覧下さい。
「野中くん発 ジブリだより」2018年9月号
 
 スタジオジブリは8月15日を含む1週間を例年夏季休暇としており、今年も8月11日(土)〜19日(日)がお休みでした。制作部門は新作の公開年は1週間ではなく2週間だったりしますが、今年はそうではないので、小金井のスタジオでは「君たちはどう生きるか」制作スタッフを含めほとんどの人がこの期間、夏休みでした。今年の夏は異常な暑さでしたが、この号が出る9月10日頃、果たして秋の気配をどこまで感じられる気候になっているでしょうか。

 一方、三鷹の森ジブリ美術館は当然ながら夏休みはなく、8月も連日沢山のお客様をお迎えしていました。昨年5月から始まった企画展示「食べるを描く。」展は、この欄でもお伝えした通り期間を延長して11月初めま
で開催予定ですが、3月から始まった新作短編映画「毛虫のボロ」の上映は8月一杯でひとまず終了、現在土星座では9月末まで「めいとこねこバス」を上映中です。それに伴い2階ギャラリーの「毛虫のボロ」展も9月頭に終了し、9月12日(水)から新しいギャラリー展示〝「トトロの生まれたところ」ふるさとスケッチ日記〞が始まります。5月末に岩波書店から出た書籍『トトロの生まれたところ』(宮崎駿 監修、スタジオジブリ 編)は、宮崎朱美さんが描いた、所沢の四季折々の自然や植生の美しいスケッチと日記、宮崎駿監督の「となりのトトロ」のイメージボードと新たなインタビュー、鈴木敏夫プロデューサーによる八国山の写真探訪記などで構成されていて、〝トトロの生まれたところ〞である所沢の自然の魅力が伝わる素敵な本に仕上がっています。お陰様で重版が何度もかかるほど好評ですが、今回は、書籍に収録しきれなかった、瑞々しい野生の息吹が伝わる朱美さんの原画やスケッチブックの数々を展示し、その絵の魅力を改めてご紹介します。ジブリ美術館は予約制。詳しくはホームページをご覧下さい。
 
 最後になりましたが、この夏各地で行われたジブリ関連の展覧会、開催中のものがまだいくつかありますので、この機会にぜひどうぞ。宮崎県立美術館で「スタジオジブリ・レイアウト展」が9月17日(月・祝)まで、広島県立美術館で「ジブリの大博覧会」が9月24日(月・振休)まで、新潟県立万代島美術館で「近藤勝也展」が同じく9月24日まで、そして中国・上海の上海環球金融中心で「World of GHIBLI in China」が10月7日(日)まで、それぞれ開催中です。
「野中くん発 ジブリだより」2018年10月号
 
 皆さんの中で、LPレコードで音楽を聴いたことがある人はどれくらいの比率になるのでしょうか。ふとそんなことを思ったのは、11月3日(土・祝)に、スタジオジブリの初期3作品「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」のLPレコードの復刻盤が発売されるからです。ご存じのように、80年代にLPはCDに取って代わられました。私もそれまでLPを買っていましたが、1988年に初めてCDプレーヤーを購入し、以後はずっとCDを聴いてきました。「となりのトトロ」「火垂るの墓」のサントラ盤はLPで買いましたが、「トトロ」のサウンドブックのアルバムはCDで買ったことを覚えています。メーカーも、ジブリ作品のLPは「魔女の宅急便」のサントラ盤を限定BOXの形で出したのが最後だったようです。ですが、近年LPレコードが一部で見直されつつあるそうで、生産枚数も伸びているのだとか。そこでLPの魅力をさらに知ってもらおうということで、数年前から11月3日に「レコードの日」というイベントを行うようになったそうで、今回の復刻発売もその一環として行われます。各作品3タイトルずつ、それぞれイメージアルバム、サントラ盤、シンフォニー編(「トトロ」のみサウンドブック)が発売されるので合計9タイトル。この企画のために新たにマスタリングした音源を使用しており、ジャケットや帯、ライナーノーツも極力オリジナルを再現。今回復刻される9タイトルは、現行CDとはジャケットの絵柄が違う物が多ています。30センチ四方の大きなサイズでその絵柄が楽しめるわけで、これはLPならではの魅力ですね。中には、元々そういう仕様だったので複製セル画付きの物もあり、そうしたこともあって価格はタイトルごとに違います。発売元は徳間ジャパンコミュニケーションズ。詳しくは「レコードの日」公式サイトをご覧下さい。http://レコードの日.jp
 
 さて、この季節は毎年、来年のカレンダーが発売される時期ですが、今年も長編21作品を収めた「スタジオジブリ アートフレームカレンダー」と「となりのトトロ」の2種が出ました。定番商品ですね。
 
 最後になりましたが、夏に続いて、秋にも金曜ロードSHOW!で再びスタジオジブリ作品が放送されます。題して「2週連続放送 秋のジブリ」。今回は10月26日(金)に「もののけ姫」、11月2日(金)に「紅の豚」が放送されます。どうぞ宜しく。
「野中くん発 ジブリだより」2018年11月号
 
 10月18日(木)と19日(金)、スタジオジブリ恒例の社員旅行がありました。行先は栃木県。今年は日程を1日短縮し、1泊2日とコンパクトなバスの旅でした。また、スタジオと美術館は今年は別々の実施となり、スタジオのスタッフのみで出掛けました。
 
 初日朝、東京駅と武蔵野線の新秋津駅の2か所で別々に集合。高速道路途中のサービスエリアで合流し、最初の目的地である渡良瀬遊水地へ。ボランティアのガイドに案内をしていただき、エリアの広さ、葦の高さを実感しました。再びバスに乗って栃木市へ。一旦自由行動となり、昼食をそれぞれとった後、蔵の街として知られる市内を各自散策しました。宮崎駿監督、鈴木敏夫プロデューサーは途中まで一緒に動いていて私もそこにくっついていたのですが、宮崎監督の勧めで横山郷土館へ行き、その後、たまたま中島清文社長の母校・栃木高等学校がすぐそばだったのでそこの古い建物を少し見学。その後巴波川の周辺を歩き回り、バスに戻って全員で大谷資料館へ。地下の大谷石採掘場跡は、神殿のような独特の雰囲気で面白かったです。その後は那須のホテルへ移動、みんなで揃って夕食を頂き、卓球部屋と二次会部屋でさらに親睦を深めました。卓球部屋の設置は久しぶりでしたが、幅広い年齢層が一緒に楽しめるのが卓球のいいところ。若手スタッフと共に宮崎監督、鈴木プロデューサーも参加し、トーナメント戦で盛り上がりました。

 2日目は茶臼岳、美術館めぐり(奈良美智さんのNʼs YARDなど)、那須どうぶつ王国、自由行動とそれぞれコースに分かれての観光。茶臼岳は山頂が濃霧でロープウェイの終点までで止めた人が多かったそうです。昼食は再び集合しジンギスカン&バイキング。そしてバスに乗り帰京しました。今回、日程が短かったこともあり、割と決まったスケジュールに沿って皆で動いた点もいつもと違っていましたが、その分中身は濃かったと思います。幸い雨もほぼ降らず、各自リフレッシュ出来たのではないでしょうか。
 
 さて、富山市の高志の国文学館では「生誕100年記念特別展 堀田善衞─世界の水平線を見つめて」が開催中です。宮崎駿監督が尊敬し愛読した堀田さんの展覧会、ジブリも協力していて、宮崎吾朗監督によるアニメーション化企画「路上の人」のイメージボード等の展示もあります。会期は12月17日(月)まで。ぜひご覧下さい。
「野中くん発 ジブリだより」2018年12月号
 
 三鷹の森ジブリ美術館の新しい企画展示が11月17日(土)から始まりました。題して「映画を塗る仕事」展。アニメーションの制作工程の中で、キャラクター等の色を決め、その色を塗る部門を仕上と呼びますが、今回の展示はその仕上部門に焦点を当てています。それも少し前の時代の仕上の仕事。コンピューターを使いデジタル技術で色を塗る以前の、セルとセル絵の具を使っていた頃を採り上げています。ジブリ作品で言えば「もののけ姫」までですね。
 
 アニメーションは実写と違い、画面に映るものはすべて描かなければなりません。塗る色もすべて作り手が決めているわけで、そこには演出家の意図があります。キャラクターの性格や心情、物語の中の時間経過や天候、場の雰囲気を表すために、さらには、リアリティと存在感を高め、映画をより豊かで訴求力のあるものにするために、どういう色を塗るのがいいのか。故・高畑勲監督と宮崎駿監督は、これまでの作品において色彩ついてどのような演出意図があったのか。また、監督たちの意図を受けて、色彩設計の担当者は、実際にどういう色を選んで、どうやってセルに絵の具で色を塗ってきたのか。この展示では、各作品の実例を具体的に紹介し、「映画を塗る仕事」の秘密と魅力に迫ります。デジタルペイントになってからは、使える色の数は理論上無制限になりました。しかし、セルとセル絵の具を使っていた頃は、厳然たる物理的制約がありました。当時、制作スタッフ達は、知恵と工夫でどうやってその制約を乗り越えていったのか。今回の展示は、制作当時に使われた実際のセル画を200点ほど展示してそれを説明しており、とても見応えがあります。ここ20年ほど、セル画を目にすることは普段ほとんどないのですが、今回まとまった数のセル画を久しぶりに見て、やはり独特の魅力があるなあと改めて思いました。単純に、見ているだけでも楽しいです。また、580色分のセル絵の具の瓶も雰囲気を出しています。会期は来年11月までの予定。どうぞお越しください。なお、ジブリ美術館は予約制です。
 
 さて、各地を巡回しお陰様で好評の「ジブリの大博覧会」が、12月8日(土)より富山市ガラス美術館で開催されています。今回は9会場目となりますが、富山ならではの新たな展示物も増えているとのことですので、富山県や近県の方はぜひどうぞ。来年2月24日(日)までの開催です。