文档:野中君发吉卜力新闻/2019年

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「野中くん発 ジブリだより」2019年1月号
 
 新年あけましておめでとうございます。2019年の始まりです。今年もスタジオジブリの年賀状は宮崎駿監督が、三鷹の森ジブリ美術館の年賀状は宮崎吾朗監督が、例年通り干支をモチーフにそれぞれ描いていて、各ホームページに掲載されています。見ると笑みが浮かぶような絵柄ですので、どうぞご覧下さい。
 
 スタジオでは今年も昨年に引き続き、2本の新作に取り組んでいます。宮崎駿監督のオリジナル長編「君たちはどう生きるか」と、宮崎吾朗監督の長編CG作品ですが、どちらもひたすら制作中ですので、今しばらくお待ち下さい。一方ジブリ美術館では、昨年11月から始まった企画展示「映画を塗る仕事」展を好評開催中。アニメーションの制作工程における仕上の仕事にスポットを当てたこの展示ですが、色による演出を高畑勲監督・宮崎駿両監督はどのように行ってきたか、その演出意図を実現するべく、仕上スタッフはどう工夫と努力を重ねてきたのかが、セル画の現物を使って丁寧に説明されていてとても見応えがあります。どうかご覧下さい(ジブリ美術館は予約制です)。
 
 今行われているジブリ関連の催しとしては、昨年12月から富山市ガラス美術館で始まった「ジブリの大博覧会」があります。各地を好評の内に巡回してきたこの展覧会ですが、富山展では、地元のガラス工芸家らの協力により新たに作られた「ジブリの幻燈楼」という大型の展示品が富山限定で飾られていて、これがとても素晴らしい出来ですので、富山はもちろんのこと、近隣の県の方も行ける方はぜひどうぞ。2月24日(日)までの開催です。あと、最近の出来事としては、文春 ジブリ文庫の最新刊『シネマ・コミック ハウルの動 く城』が1月4日(金)に発売されました。『シネマ・コミック』シリーズは昨年12月に新刊「もののけ姫」発売に合わせて10タイトルが一斉に電子書籍化されましたが、今回も紙の本と電子書籍の両方が出ています。ジブリ作品自体の本の電子書籍は『シネマ・コミック』が初で、値段も1冊950円(税込)と随分お得。今後も新刊が出るのでご注目下さい。
 
 最後にもう一つ。先月発表された今年後半の催しに、米アカデミー・ミュージアム(Academy Museum of Motion Pictures)の「宮崎駿展(仮題)」があります。 同館のこけら落としとして開催される、アメリカ初の宮崎監督の大規模展覧会。期待が高まります。
 
 というわけで、本年も宜しくお願い申し上げます。
「野中くん発 ジブリだより」2019年2月号
 
 今年はスタジオの仕事始めが1月7日(月)でした。そのせいか第1スタジオ玄関前の門松もその日の昼過ぎには片付けられ、例年より正月気分は初日から薄かったように思います。ただ、1月5日(土)は宮崎駿監督の78歳の誕生日だったので、7日は2日遅れでしたが鈴木敏夫プロデューサーの発案でお祝い企画を事前に準備しており、スタジオに現れた宮崎さんを待ち構えていたスタッフらが一斉に拍手で迎え、サプライズのお誕生日会を催しました。ささやかな会でしたがバースデーケーキは特別製。「君たちはどう生きるか」作画監督の本田雄くんが描き下ろした同作の重要キャラクターのイラストを基に、ケーキ屋さんがチョコレートで巨大なプレートを作り、ケーキ本体にセットしてユニークなケーキを作ってくれました。とても見事な出来で、宮崎さんも気に入り、チョコのプレートは食べないでスタジオ内にしばらく飾ることに。社内の展覧会担当が得意の展示技術できれいに壁に掛けてくれました。現在(1月下旬)も、ピクサーやアードマンから頂いた寄せ書きの額と並んで飾ってあり、宮崎さんのサインも添えてあって見応えのある場所になっています。チョコですからずっとそのままとはいかないでしょうが、もう少し見ていたいですね。

 さて、今年行われるジブリ関連の催しがいくつか、年末から年明けに発表されました。まず舞台の話題が2つ。1つは『宮崎駿の雑想ノート』の1編「最貧前線」の演劇化で、水戸芸術館ACM劇場のプロデュースで夏から秋に全国8か所を巡演予定です。出演は内野聖陽さん、風間俊介さん、溝端淳平さん他。もう 1つは12月に新橋演舞場で上演される新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」。漫画版が原作で、ナウシカは尾上菊之助さん、そしてクシャナは中村七之助さん。展覧会「鈴木敏夫とジブリ展」も新たに発表されました。これまで数か所で開催された「言葉の魔法展」をバージョンアップし、内容をよりよく伝える物に改題、4月20日(土)から5月12日(日)まで神田明神 文化交流館「EDOCCO」内 神田明神ホールで開催されます。また、3月2日(土)から10日(日)まで調布のシネマフェスティバルの一環として「風の谷のナウシカ」がイオンシネマ シアタス調布で上映されます。
 
 最後に本の話題を。二木真希子さんの『世界の真ん中の木  愛蔵版』が復刊ドットコムから出ました。大判化で二木さんの絵をじっくり楽しめますね。
「野中くん発 ジブリだより」2019年3月号
 
 この原稿を書いているのは2月ですが、スタジオでも世間の流行通りに(?)インフルエンザにかかる人が結構出ています。これまでにも毎年いたはずですがあまり印象に残っていません。今年はやはりそれだけかかった人が多いということでしょう。社内の掲示板にも注意を呼び掛ける文書が貼り出されました。昔と違って今は感染が分かったら出勤しない、熱が下がってもすぐには出てこない、ということが当たり前になったのは良いことですが、ともかくこの号が出る頃には流行が収まっていることを願います。

 さて、2月24日(日)まで富山市ガラス美術館で開催された「ジブリの大博覧会」、お陰様で本当に沢山の方にお越しいただきました。富山限定のオリジナル展示品「ジブリの幻燈楼」もとても良い出来で大人気でした。改めまして御礼を申し上げます。この「ジブリの大博覧会」、次は九州に巡回し3月15日(金)から福岡市博物館で開催されます。2015年秋、愛知県の愛・地球博記念公園で始まったこの展覧会も気が付けば遂に10会場目。内容のパワーアップをはかろうということで、福岡の会場からは新たな展示が加わります。すみません、私もまだその新展示を制作途中の写真でしか見ていないのですが、造形作家のあの竹谷隆之さん(「巨神兵東京に現わる」の巨神兵の雛形造型など)が手掛けた大型の展示物はとても迫力があり、見応えのあるものになりそうで、個人的にも期待が高まっております。九州では長崎と大分でこの展覧会は過去に開催されていますが、一度観た方にも、再度足を運んでいただく価値が十分ありそうです。福岡展は6月23日(日)まで。あと、海外ですが台湾では「スタジオジブリ・レイアウト展」が台北の中正紀念堂で現在開催中です。2008年から巡回を続けてきた「レイアウト展」もいよいよここが最終会場。4月18日(木)までの開催ですので台湾に行かれる方、在住の方はこの機会にぜひどうぞ。

 最後になりましたが、3月に出る出版物をご紹介。まず、お馴染み文春ジブリ文庫の最新刊『シネマ・コミック ホーホケキョ となりの山田くん』が、3月8日(金)に紙の本と電子書籍の両方で発売されました。電子書籍はお得な950円(税込)。また、鈴木敏夫プロデューサーの著書『風に吹かれて』が中公文庫からⅠ、Ⅱの2冊に分かれて3月25日(月)に発売されます。どうぞよろしく。
「野中くん発 ジブリだより」2019年4月号
 
 4月20日(土)、「鈴木敏夫とジブリ展」が神田明神 文化交流館「EDOCCO」内 神田明神ホールでスタートします。東京でスタジオジブリの展覧会が開かれるのは、2016年夏に六本木ヒルズで開催された「ジブリの大博覧会」以来3年ぶりです。
 
 この展覧会、2017年に広島・筆の里工房で初めて開催され、翌年に名古屋、金沢と巡回し好評を博してきた「スタジオジブリ 鈴木敏夫 言葉の魔法展」をバージョンアップしたもので、従来の展示をさらにジブリ色の濃い内容にリニューアル。これまでの展覧会名や最初の会場からうかがえるように、元々の企画内容は鈴木敏夫プロデューサーの書と、それが表現する言葉の世界が中心でした。今回、バージョンアップに合わせて、より内容に即した形に展覧会の名称も変更されたわけです。鈴木プロデューサーが高畑勲監督、宮崎駿監督と出会って40年。作品の世界観をより多くの人達に伝えるため、鈴木プロデューサーはその本質を言葉にし、文字を書いてきました。会場で、それらの言葉と独特の書に触れることで、多くの人がジブリ作品の様々な場面を思い出し、作品の世界観を蘇らせるでしょう。多数の資料や書画によってジブリの歴史と未来が分かり、また、鈴木さんというユニークな人物がどのようにして生まれたのか、どういう人なのかの一端を知ることも出来る、とても中身の濃い展覧会です。こう書くとなんだか随分真面目な展覧会に思えるかもしれませんがさにあらず。具体的には書けませんがユーモアあふれる仕掛けが今回は色々追加されていて、とても楽しい気分で会場を後にすることが出来るはずです。また、会場の神田明神とコラボレーションした、和の雰囲気あふれるオリジナルグッズも各種登場。会期は5月12日(日)まで。詳しくは公式サイトをご覧下さい。https://ghibli-suzuki.com
 
 さて、高畑勲監督が亡くなって早いもので 1 年が経ちました。東京国立近代美術館は今年の7月2日(火)から10月6日(日)まで、「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」を開催します。詳しくはいずれまたお伝えしますが、前売券が4月23日(火)から発売予定ですのでどうか宜しく。
 
最後になりましたが、福岡市博物館で開催中の「ジブリの大博覧会」福岡展、大変多くの方に観て頂いており、新展示も大好評とのことで有難いことです。 6月23日(日)までですのでこちらもどうぞ宜しく。
「野中くん発 ジブリだより」2019年5月号
 
 この『熱風』は月刊誌なので、原稿を書いている時期が発行の時期とどうしても3週間ほどずれるのですが、今年はゴールデンウィークが10連休ということで締切が早く、執筆時点での最近の出来事を書くと、いつも以上に時期はずれな印象を与えるかもしれませんね。でもせっかくなので、記録の意味も込めて毎年恒例のお花見弁当の配布についてちょっと書きますと、今年は初めてスタジオと美術館で別々の日に実施しました。スタジオの方は、暖冬なのでいつもより早めに咲くのではと予想し3月26日(火)に設定したのですが、3月はそれほど暖かくなかったせいか小金井市の桜はまだまだで、しっかりと花見をしながらお弁当を食べた人は残念ながらそれほど多くなかったようです。一方、美術館の方は新人の入社に合わせて4月1日(月)に配布されましたが、井の頭公園の桜はある程度咲いていたようで、それなりの雰囲気があったのではないでしょうか。この日、12人の新入社員が三鷹の森ジブリ美術館で研修を開始しました。というわけで、この号が出る頃はもうゴールデンウィークも終わっていますが、世間はどんな感じになっているでしょうね。スタジオジブリは一応カレンダー通り10連休の設定になっていますが、夏に新作公開がないとはいえ、一部のスタッフは出て作業をしたようです。もちろんジブリ美術館はすべて営業日。きっと沢山のお客さんでにぎわったことでしょう。美術館はこの後、5月21日(火)から 31日(金)までメンテナンス休館となっています。
 
 ところでスタジオジブリでは現在、宮崎駿監督の新作「君たちはどう生きるか」の制作スタッフを募集しています。職種は仕上(デジタルペイント)で、業務開始は今年の10月1日(火)を予定。募集人数は若干名。詳しくはジブリのホームページをご覧下さい。応募に必要な書類のダウンロードもそこで行います。応募書類の到着締切は5月31日(金)。ホームページのURLは http://www.ghibli.jp/info/012972/ です。
 
 最後に出版物のお知らせを。文春ジブリ文庫の『シネマ・コミック』シリーズですが『崖の上のポニョ』が5月9日(木)に発売されました。紙の本が1600円(税別)、電子書籍が950円(税込)。そして6月6日(木)には高畑勲監督の初長編『太陽の王子 ホルスの大冒険』が発売予定です。「ホルス」がこのスタイルの本になるのは多分初めてではないでしょうか。
「野中くん発 ジブリだより」2019年6月号
 
 7月2日(火)から、東京国立近代美術館でいよいよ「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」が始まります。高畑監督についてのまとまった展覧会は今回が初めてです。

 この展覧会は、昨年高畑監督が亡くなったから企画されたわけではありません。監督の生前から企画は動き始めていて、監督自身が開催を了承していました。残念ながら本人がそれを観ることはかないませんが、とても内容の充実したものになりそうです。
 
 高畑監督は、自身が関わってきた作品の制作資料を沢山保存していました。今回、それらの資料がフル活用されるそうで、たとえば、監督の制作ノートや、東映動画の初期長編の絵コンテなど、未公表だった貴重な資料が多数展示されます。さらに、監督の指示を受けて各スタッフが実際に描いた、レイアウトや原画、背景美術などの各作品の色々な制作素材もふんだんに展示されます。高畑監督自身は絵を描く人ではありませんでしたが、それらの展示によって、高畑監督が、アニメーションの演出をどのように行ってきたかを明らかにするのがこの展覧会の狙いの1つです。
 
 展覧会のサブタイトルは「日本のアニメーションに遺したもの」となっていますが、これは、高畑監督が日本のアニメーションに大きな影響を与えてきたことから来ていると思います。いや、日本だけでなく世界のアニメーションの在り方を変えたと言っていいのではないでしょうか。それは、前述の演出法ももちろんですが、それだけでなく、幅広い多様なテーマ、映像表現の革新性など、多岐に亘っています。この展覧会は、それらを総合的に見せてくれるものになるはずです。
 
 スタジオジブリは企画協力として関わっていますが、高畑さんが在籍してきた色んなアニメーション制作会社にも皆協力していただいており、過去半世紀以上の、日本のアニメーションの歴史も感じさせてくれる展覧会になると思います。主催は東京国立近代美術館、NHK、NHKプロモーション。すでに前売券は発売中ですのでぜひどうぞ。なお、高畑監督の地元である岡山にも巡回予定です。
 
 さて、各地を好評裏に巡回してきた「近藤喜文展」が7月6日(土)から三重県総合博物館で始まります。ここが最後の開催地となりますので、中部地方、近畿地方の方はどうぞ宜しく。
「野中くん発 ジブリだより」2019年7月号
 
 今、東京国立近代美術館では「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」を開催中です。この原稿を書いている時点では私もまだ展示自体を観ていないですが、内容を事前に見て、予想以上に未公開資料が多く、その点だけでもこの展覧会は必見だと思いました。これらの未公開資料を駆使して、新発見も交えつつ、高畑監督の演出の秘密に迫っているのですが、見どころはそれだけではありません。各作品のためにスタッフが描いた、イメージボード・キャラクタースケッチ・原画・背景画・レイアウト、そしてセル画なども多数展示に含まれており、見応え十分のそれらの絵は、観ていると作品のことが色々思い出されてきて、さらに楽しめます。この展覧会は高畑監督の50数年に及ぶアニメーション制作の全キャリアが概観出来るのはもちろんのこと、世界のアニメーションの歴史において、高畑監督が何を成し遂げてきたかが分かる内容になっています。高畑勲展は来年4月〜5月に高畑監督の地元である岡山県立美術館に巡回することが決定していますが、それ以外は未定ですので、この機会に是非ご覧下さい。会期は10月6日(日)まで。
 
 この夏、ジブリ関連の展覧会は他には「近藤喜文展」が三重県総合博物館で9月16日(月・祝)まで開催中です。さらに7月13日(土)からは、沖縄県立博物館・美術館で「ジブリの大博覧会」が、長崎のハウステンボスで「鈴木敏夫とジブリ展」がそれぞれ始まります。どうぞ宜しく。
 
 ところで、スタジオジブリの作品を収めた映像ソフトが久しぶりに発売されます。「ジブリがいっぱいSPECIAL ショートショート 1992─2016」。ジブリの作ってきた各種ショートフィルムを収めた短編集です。「ショートショート」は2005年に一度発売されていますが、それ以降に制作された短編を加え、いわゆる増補版として新たに発売されることになったのが今回のソフトです。「コニャラ」CMや「鳥獣戯画」CMなど、10作品が増えました。また、今回はDVDだけでなくブルーレイディスクも初めて発売されるので、より鮮明な画面で「On Your Mark」などの作品をお楽しみいただけます。7月17日(水)にウォルト・ディズニー・ジャパンから発売。また、同日より、「ジジのパスケースホルダー」がもらえる同社のサマー・キャンペーンも始まります。詳しくは同社のホームページをご覧下さい。
「野中くん発 ジブリだより」2019年8月号
 
 この夏も、恒例のジブリ作品放映が金曜ロードSHOW!で実施されます。題して「3週連続 夏はジブリ」。何年か前から、ジブリ作品は2〜3本を続けて放送するスタイルが定着しています。勢いをつける狙いがあっての集中放映ですが、視聴者の皆さんも期待して下さっているようで、今回もその形で放送されます。作品は8月16日(金)が「千と千尋の神隠し」、23日(金)が「崖の上のポニョ」、そして30日(金)が「天空の城ラピュタ」。「千尋」はいつもより約一時間早い19時56分開始ですのでご注意下さい。データ放送やTwitter等での各種デジタル展開もありますのでご注目を。こうしたデジタル展開は、沢山の人と同時に同じ作品を観ていることが体感出来て、テレビの新しい楽しみ方にもなっているようです。もちろん単に観るだけでもいいと思いますが。なお、東京・汐留の日本テレビ本社で開催中の、これまた恒例の「超☆汐留パラダイス!」ではこの連続放送のブースも設置されていて、「湯屋」のフォトスポットもあるので、お近くにお越しの際はちょっとお立ち寄り頂くのもいいのでは。8月後半の金曜ロードSHOW!3週連続ジブリ作品放送をどうぞ宜しく。
 
 ところで、この号が出る頃は少し前の話題になっていると思いますが、6月21日(金)から中国本土で公開された「千と千尋の神隠し」が大ヒットとなりました。とても有難いことです。公開された週の成績は新作を抑えて第一位だったそうで、今まで中国では「千尋」の劇場公開が無かったとはいえ、18年前の作品をそのように多くの観客に観て頂けたのは極めて珍しいことでしょう。中国では昨年末に「となりのトトロ」を公開して、これも 30年前の作品としてはいい成績だったのですが、「千尋」はそれを上回る広がりを見せてくれました。世界がますます狭く感じられます。
 
 最後に最近のあれこれのおさらいを。先月もお伝えしましたが、スタジオジブリの短編作品32作品を収録した「ジブリがいっぱいSPECIAL ショートショート 1992─2016」が、ブルーレイとDVDで7月17日(水)にウォルト・ディズニー・ジャパンから発売されました。また、展覧会は、東京国立近代美術館で「高畑勲展」、三重県総合博物館で「近藤喜文展」、沖縄県立博物館・美術館で 「ジブリの大博覧会」、そして長崎のハウステンボスで「鈴木敏夫とジブリ展」がそれぞれ開催中です。いずれもどうぞ宜しく。
「野中くん発 ジブリだより」2019年9月号
 
 この原稿は8月の夏休み明けに書いているのですが、今年の夏も異常な暑さですね。梅雨明けが去年と逆に随分遅かったですが、明けた後は酷暑の日々。去年も同じことを書きましたが、それでもやはり書いてしまいます、この号が出る9月中旬にはいくらかでも涼しくなっていて欲しい、と。ちなみにこれも以前書きましたが、スタジオジブリの夏休みの設定は法則があって、8月15日を含む一週間となります。ですから今年は前後の土日を入れると8月10日(土)から18日(日)まででした。新作映画公開の年は制作部門はもっと長くなりますが、今年はそうではないので全社この設定でした。もっとも、一部で出る人はいたようで、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」や、宮崎吾朗監督の新作の制作作業を進めていました。あと、スタッフが少ないときこそ、ということで、普段出来ないコンピューターのメンテナンスや、スタジオの建物の補修工事などもこの時期に行われたので、その担当者も出社。役目とはいえ他の人が休んでいるときにずっと出勤というのはなかなか大変ですが、今年は第1スタジオ玄関の庇(ひさし)が傷んで来たのでその工事などが行われました。吉祥寺から小金井市梶野町にスタジオジブリが移ってきたのが1992年8月。丸27年経っているわけで、やはり色々と補修するべきところは出てきます。玄関の庇は重みのせいか、傾きが出ていたので約7.5センチ引き上げたそうで、居合わせた宮崎駿監督も工事をしばし見守っていたそうです。ともあれ夏休みは明けて再びスタジオは通常通り営業再開。2本の新作制作を続けています。
 
 一方、三鷹の森ジブリ美術館は当然ながら夏の間もいつも通り開館してお客様をお迎えしていました。有難いことにもうずっとチケットは完売が続いていて、夏休みだからいつもよりさらに混雑する、ということはないわけですが、やはりこの暑さなので運営には色々気を遣っていました。なお、企画展示「映画を塗る仕事」展は11月3日(日)までの開催予定です。未見の方はぜひどうぞ(ジブリ美術館は予約制です)。
 
 最後に展覧会について今一度おさらいを。10月6日(日)まで東京国立近代美術館で「高畑勲展」が、9月23日(月・祝)まで長崎のハウステンボスで「鈴木敏夫とジブリ展」が、そして9月16日(月・祝)まで三重県総合博物館で「近藤喜文展」が、それぞれ開催中です。どうぞ宜しく。
「野中くん発 ジブリだより」2019年10月号
 
 この10月から、「池澤夏樹映像作品全集」がジブリ学術ライブラリーのSPECIALシリーズとして発売開始されます。ジブリ学術ライブラリーは、スタジオジブリが多くの人に観て欲しい、ソフトとして残すべき、と考える学術的な番組や作品を発売するレーベル。高畑勲監督、宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーが熱心に観た番組が中心で、これまで「人間は何を食べてきたか」「日本 その心とかたち」「NHK ふるさとの伝承」などをDVDやブルーレイディスクで出してきました。今回、鈴木プロデューサーが熱心な読者であり、高畑監督もそうであった作家の池澤夏樹さんの出演作を、放映局・制作会社別に3回に分けて発売することになったものです。

 まず、10月16日(水)はNHK編。「100年インタビュー 池澤夏樹」と「知るを楽しむ 私のこだわり人物伝 星野道夫 生命(いのち)へのまなざし 第4回 長い旅の途上」のカップリング、「日本をみつめよう ふるさとの塾 第3回 沖縄・なんぶ塾 島の豊かさに学ぶ」、「プレミアム8 TRAVEL 世界一番紀行 世界で一番南の村〜人類の旅路の果て プエルトトロ〜」、「知る楽 探究この世界 池澤夏樹の世界文学ワンダーランド」、「我々はどこへ行くのか 池澤夏樹とゴーギャン 文明への問いかけ」と「日曜美術館 大英博物館 人類史への旅」のカップリング、そして「池澤夏樹と世界の果て パタゴニア 冒険の旅」の計6タイトルです。12月18日(水)はポレポレタイムス社編。「DO YOU BOMB THEM?」の1タイトルが出ます。そして2020年2月19日(水)はTBS編。「未来からの贈りもの─この星を旅する物語─」、「スティル・ライフ 霧子とマリエの犯罪的同棲生活」の2タイトルです(「スティル・ライフ」は出演ではなく原作)。

 内容はバラエティ豊かですが、池澤さんが世界各地に旅に出た時の様子を捉えた作品が多いのが特徴の1つでしょう。鈴木プロデューサーが書いたコピーも〝池澤夏樹の出かける旅の中に あたらしい「いま」。〞というもので、池澤さんの〝旅〞を通して、世界の広さをさらに知り、感じることが出来ます。もちろんスタジオ収録の番組も、池澤さんの理知的な言葉の数々が大変魅力的です。販売はポニーキャニオン。NHK編はブルーレイとDVD、それ以外はDVDのみの発売です。詳しくはジブリのホームページをご覧下さい。どうぞ宜しく。http://www.ghibli.jp/info/013170/}-
「野中くん発 ジブリだより」2019年11月号
 
 三鷹の森ジブリ美術館では、11月16日(土)から新企画展示『手描き、ひらめき、おもいつき』展〜ジブリの森のスケッチブックから〜が始まります。ジブリ美術館は準備段階から今に至るまで、〝お客様に面白いものを提供し、楽しんでいただく〞という考えのもと、建物を建て、展示物を作り続けてきました。その作業の具体的な内容を、宮崎駿監督自身の描いた絵や文章で紹介します。いわば〝メイキング・オブ・ジブリ美術館〞。ジブリ美術館自体がテーマです。
 
 企画展示室第一室は、第1回目の企画展示「千と千尋の神隠し」を始めとする、宮崎監督が直接携わった企画展示をご紹介。映画制作の合間を縫うようにして生み出されたいくつもの企画展示は、何を考え、どの様な作業を経て出来上がったのか。その創作過程と込められた想いを、当時描いたスケッチや集めた参考資料等で伝えます。粘り強い試行錯誤の連続で生まれる物もあれば、意表を突く〝ひらめき〞や〝おもいつき〞であっけらかんと困難をクリアして生まれる物もあり、制作過程のそうした様子が見て取れる資料も展示。企画展示の創造は、苦しいだけではなく面白く楽しい面もあることも感じていただけるでしょう。今回の企画展示は展示品の点数がとても多く、見応えのあるものになりそうです。
 
 第二室では、スタジオジブリが美術館を作ろうと思い立った経緯や、準備段階で生まれた数々のアイデアが描かれたイメージボードを展示します。設計図面にまでも修正を入れる宮崎監督の建物への思い入れが見て取れる図面も初公開。さらに、完成したジブリ美術館の各階層が一目で分かる立体模型も設置し、構想段階の姿と現在の完成形を見比べることが出来ます。

 2階ギャラリーでは、オリジナル短編アニメーショ ン作品の展示ために描いた数々の絵を展示。さらに、子どもたちに人気の〝こねこバス〞に乗った気分になれる展示物も置かれます。また、映像展示室「土星座」では期間中、通常の短編作品だけでなく「空想の空とぶ機械達」も特別上映予定です。
 
 映画制作だけでなく、建物や空間のデザイン、さらに展示の提案も行う宮崎監督。本企画展示からそのさまざまな仕事の根底にあるユニークな考え方や創作でのひらめきが発見出来るのではないでしょうか。
 
 開催は2021年5月までの予定。どうぞお越し下さい。(ジブリ美術館は予約制です)
「野中くん発 ジブリだより」2019年12月号
 
 12月6日(金)より、新橋演舞場では新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」を上演中です。主役のナウシカを演じるのは尾上菊之助さん。この舞台は4年前に「ナウシカ」を歌舞伎で上演したい、それも映画版ではなく原作漫画全 7巻をすべて舞台化したいという強い希望が、尾上さんからジブリに寄せられたことから始まりました。言うまでもなく、ジブリ作品や宮崎駿監督の作品が歌舞伎になるのは初めてのこと。どんな舞台になるのか、この原稿を書いている時点では我々もまだ分かりませんが、尾上さん、クシャナを演じる中村七之助さんを始め関係者の熱意はすごいものがありますし、演出のG2さんは長編漫画の歌舞伎化に実績があり、脚本は歌舞伎に詳しい松竹の戸部和久さんと、ジブリ作品を何度も手掛けてきた丹羽圭子さんの組み合わせですので、とても期待しているところです。昼の部、夜の部の通し上演なので、11時開演で終わるのは夜の9時頃とそれだけでも大変ですが、きっと熱い舞台となっているのではないでしょうか。チケットも完売とのことで、有難いことです。
 
 さて、先月もお伝えしましたが、三鷹の森ジブリ美術館では新企画展示『手描き、ひらめき、おもいつき』展〜ジブリの森のスケッチブックから〜が始まりました。実際に展示を見てみると、その内容に圧倒されます。展示品の量がとても多く、しかも私も見るのは初めてという貴重な資料が続々登場。これまでジブリ美術館が開催してきた企画展示の制作時、そしてそもそもジブリ美術館を作る時に、宮崎駿監督がどういう働きをしてきたかを、イメージボードやスケッチ、メモなどで分かりやすく説明しているのですが、改めて、その爆発的な創作力に驚かされました。今更ながら、こんなことにまで意見を言い、案を出しているんだ(それも具体的に)、と感心し、あまりの徹底ぶりに時にはあきれることも。見れば見るほど楽しめる展示ですが、その場にいるだけでも、美術館の舞台裏、"メイキング・オブ・ジブリ美術館"を見ている気分になれますし、ジブリ美術館の約20年に及ぶ歴史を感じることが出来て、〝あの時の自分〞を重ねながら見て行けばある種の時間旅行を体験することも出来ます。2021年5月までの予定ですのでどうぞお越し下さい(ジブリ美術館は予約制です)。
 
 最後になりましたが、「ジブリの大博覧会」が岩手県立美術館で始まりました。こちらもぜひどうぞ。